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■「LiVES」 2005年12月号&2006年1月号 |
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【特集:小さな家でいこう。Part2】
より抜粋 |
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生活も家も「2人サイズ」ムダを省いて手に入れた贅沢ライフ |
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井の頭線・久我山駅と京王線・千歳烏山駅のほぼ中間点。どちらの駅からも徒歩10数分の静かな住宅街が広がるエリアは、都心ながらどこか郊外的な雰囲気を持っている。デザイン事務所を経営する50歳のご主人と一つ年下の奥様、そして愛犬二匹が暮らす谷山邸が建っているのは、その界隈でもとりわけ静かで緑濃い小径に面した約25坪の土地。 |
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家造りを全権委任されたご主人がこの地を選んだ理由は、「緑が多くて犬と散歩できるところ」という奥様のリクエストによるもの。約25坪の敷地に2階建てで18坪の延床面積は非効率に思えるが、それは3台分の駐車スペースの確保と、何より谷山さん自身が「小さい家」を希望したため。実は、谷山さんの家造りはこれが2度目。1軒目は独立した子供だちと過ごすための軽井沢の別宅。今回の家造りは、夫婦二人で都心暮らしを満喫するための、『使い勝手の良い小さな家』がコンセプトだった。
設計を依頼したのはご主人が建築雑誌などを見てその作品に惚れ込んだという、納谷学氏・納谷新氏。しかし二人は売れっ子建築家として超多忙。谷山さんは「何年待ってもいい」という姿勢で設計のスタートを待っていたという。
「建物はもちろん、お二人の雰囲気から『大丈夫だ』と思いました」と振り返るご主人。いざ計画が始まると、最小限の希望以外、具体的な注文はほとんどなし。全幅の信頼を寄せる谷山さんに納谷学氏・新氏が提案したのは「ピクチャーウィンドウのある家」。緑に囲まれているとはいえ、そこは都内の住宅地。道路や隣家の軒先など、「見たくないアングル」(納谷氏)も少なからずある。そこで考え出されたのが、「見たい部分だけ切り取る窓」。
「納谷さんに、『それぞれに名前が付くような窓』と言われて。そのアイディアに惹かれて、全面的にお任せしようと思ったんです」(ご主人)
設計依頼から1年半後、完成した新居の奥様の第一印象は、「小さーい!でした(笑)」(奥様)。しかしすぐにその意図が理解できたという。
「住んでみると、すごく使いやすいんです。新婚時代に戻って、小さな部屋から第二の人生を始める感じ。いろいろな景色が望める窓も気に入ってますし、小さいけれど気持ちよく呼吸できる家ですね」(奥様)
今の自分たちに必要なものは何か。はっきりとした選択基準を持つ夫婦が再スタートに選んだ小さな家。「不要なものを百袋くらい捨てた」と笑う谷山さん。徹底的にムダを削ぎ落とした家と言えるが、そこには建築家のこだわりも息つく。
「必要なものだけじゃつまらない。小さくても、やはり『豊かさ』がなければと思います。狭小住宅の面白さは、考えないと答えが見えないところじゃないでしょうか」(納谷氏)
コンパクトなリビングに緑や空を取り込む窓、小さな家であえて設けた用途フリーのエントランスホールなどが、その答えと言えるだろう。削ぎ落としつつも贅沢な、夫妻のライフスタイルを描いたような住宅だ。 |
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